TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第9回)2024年12月7日

 
TikTokのelizajwwalesというアカウントはoldiesの名曲をたくさん紹介しています。The CrystalsのDa Doo Ron Ron(1963)を紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

amazing song sad all the crap they lived just to sing because amazing

これを読んで、規範文法に則った英文に書き直し、和訳してください。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第9回解答)2024年12月7日

 
amazing song sad all the crap they lived just to sing because amazing

= This is an amazing song. I am sad about all the crap they lived just to sing, because they are amazing.

これは素晴らしい歌だ。彼女たちが、ただ歌うだけのために、受けなければならなかった全ての不当な扱いのことを想うと、私は悲しくなる。なぜなら、彼女たちは素晴らしいグループだったのだから。

・crapは「不当な扱い」という意味の不可算名詞です。

・they lived just to singは形容詞節で、the crapを修飾しています。livedは「(生活の中で)経験する」という意味の③の動詞で、目的語はcrapとtheyの間に省略された関係代名詞のthatです。ここのlivedはhad to live throughという意味です。

The Crystalsは黒人の女性シンガーのグループで、彼女たちをプロデュースしたのは有名な辣腕プロデューサーPhil Spectorでした(後に殺人罪で有罪判決を受け、2021年に獄中で死去、享年81)。彼は他のグループに歌わせて録音した楽曲をThe Crystalsの名義で発表したり、Da Doo Ron Ronも最初はThe CrystalsのメンバーではないDarlene Loveにリードを歌わせて、それを後でThe CrystalsのリードヴォーカルであるDolores “LaLa” Brooksのものに差し替えるなど、The Crystalsに対して不当ともいえる扱いをしました。数々のヒットを飛ばしたわりにThe Crystalsに対するロイヤリティも低かったと言われています。この投稿者が言っているall the crapはこれらを指していると思われます。

・because amazingはbecause they are amazingまたはbecause it is amazingです(itはDa Doo Ron Ronを指す)。このbecause節はsadの理由です。「The Crystals(ないしDa Doo Ron Ron)が素晴らしいグループ(ないし楽曲)であるだけに、彼女たちが受けた扱いに私は悲しみを覚える」という意味です。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第8回)2024年11月23日

 
TikTokのaroundsoundsmusicというアカウントはoldiesの名曲をたくさん紹介しています。Helen ShapiroのYou Don’t Know(1961)を紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

look who it is … Helen shapiro … love it

これを読んで、規範文法に則った英文に書き直し、和訳してください。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第8回解答)2024年11月23日

 
look who it is … Helen shapiro … love it

=Look who it is! Helen Shapiro! I love it.

あれを見て!ヘレン・シャピロよ。私、大好き。

・Look who it isは、③のlookの目的語に間接疑問文が置かれた形です。「look 間接疑問文」は「…を見て確かめる」という意味で、命令文で用いられるのが普通です。e.g. Just look how sunburnt I am.(私がどんなに日焼けしたかちょっと見て)(ロイヤル英和辞典)

・Look who it is! は、人と一緒に何か(たとえばテレビとか)を見ている状況で、そこに、ある人物が登場してきたときに発する慣用的な表現です。「あれが誰かを確かめろ」が直訳ですが、「あれ、見て!」くらいの意味です。

・この表現は「ある人が来るのを、人と一緒に今か今かと待ち受けている」ような状況でもよく用いられます。たとえばLook who it is! The teacher! You must open the door at once.(見ろ!先生だ!すぐにドアを開けなきゃ)

私が高2のときに英語を習った先生は明治生まれの東京帝大英文科を出た高齢の方で、戦前の旧制高校の時代に教授をなさっていて、当時の校長も元教え子だったという長老でした。この先生はいつも三つ揃えの背広をピシっと着用している威厳のある方で、この先生の授業のときは、ドアに一番近い席の生徒が待ち構えていて、先生がいらしたらドアをさっと開けてお迎えする約束になっていました。うっかり忘れると、先生はドアの前でくるっと回れ右して、教員室に帰ってしまうのです。そうなると大変で、級長が、ドアを開けるのを忘れた生徒を帯同して、教員室までお詫び言上に伺い、再度お出でを乞うことになっていました。そんなわけで、先生の授業の前は、窓から渡り廊下を見張っていて、先生の姿が見えると、「そら、来た」とばかりにドアを開け、横に佇立して、恭しくお迎えするのでした。昭和40年代の半ばくらいのことで、そういう長老の怖い先生が、英語に限らず、数学とか、他の教科にもいらっしゃいましたね。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第7回)2024年11月9日

  

YouTubeのnipstertunesというチャンネルはoldiesの名曲をたくさん紹介しています。The DriftersのSaturday Night At The Movies(1965)を紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

great classic here Jim. spent a lot of time in the pictures back then, not a care in the world! cheers, jane and brian.

これに対して、チャンネルの主宰者が以下の返信をしました。

Yes, going to the theater take in a movie was quite a treat for this young lad. The popcorn was always the Best there! Thanks so much for listening:))

 

(1) これを読んで、規範文法に則った英文に書き直してください。

(2) このpostはどういう意味でしょうか?「here」「not a care」「cheers, jane and brian」がどういうことかわかりますか?

(3) アカウントの主宰者の返信の中のthis young ladとは誰のことでしょうか?また、The popcorn was always the Best there! は2通りの解釈ができます。考えてみてください。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第7回解答)2024年11月9日

 
great classic here Jim. spent a lot of time in the pictures back then, not a care in the world! cheers, jane and brian.

=This is a great classic here, Jim. We spent a lot of time in the pictures back then, not having a care in the world! Cheers, Jane and Brian.

Yes, going to the theater take in a movie was quite a treat for this young lad. The popcorn was always the Best there! Thanks so much for listening:))

 = Yes, going to the theater to take in a movie was quite a treat for this young lad. The popcorn was always the Best there! Thanks so much for listening:))

・このhereはthisを強調する副詞です。ロイヤル英和辞典には「this book here この本(▶this+N+hereは口語でthisの強調形。this+here+Nは〈俗・方〉: this here man = this man)」と説明されています。したがってgreat classic here Jim. = This is a great classic here, Jim. = This here is a great classic, Jim.(これはまさに素晴らしい古典的な曲です、ジム)です。e.g. This here is real sushi. / This is the real heart of Tokyo here.  

・Jimはチャンネルの主宰者の名前です。

・back thenは「あの頃」という意味です。

・not a care in the worldは、notを生かすとnot having a care in the world(世の中に心配事を持たずに)という分詞構文になります。分詞構文ではなくwithout a care in the world(この世になんの苦労もなく)と言う方が普通です。

・jane and brianはカップル(多分、夫婦)の名前で、どちらか(多分Jane)がこのpostを書いたのです。

・Cheers, Jane and Brian.は、internet messageの末尾につける表現で「ジェインとブライアンより」という意味です。この場合のCheersは「くだけた手紙」の末尾につけるRegardsあるいはYours(草々)に相当します。CheersをJane and Brianから切り離して、Cheers! Jane and Brian.にするとCheers! = Thank you!です。ただし、これはイギリス英語ですから、このpostにはふさわしくありません(内容から考えて、JaneとBrianはアメリカ人ですから)。

・going to the theater to take in a movieは「映画を観るために映画館に行くこと / 映画館に行って、映画を観ること」という意味です。

・treatは「楽しみ、喜び」という意味です。

・this young lad(この若者)は"Saturday Night At The Movies"の歌詞に登場する I を指しています。おそらく「この返信を書いている人」すなわち「アカウントの主宰者=ジム」は、this young ladに自分も含めていると思います。

・The popcorn was always the Best there! は2つの解釈があります。The popcorn was the Bestが前提(premise)で、alwaysとthereに焦点(focus)を置くと「ポップコーンがベストなのは、いつもそこでだった→ポップコーンはいつも、そこで食べるのが最高だった(= Movie theater popcorn was always better than popcorn anywhere else.)」という意味になり、was the Best thereが前提で、The popcornとalwaysに焦点を置くと「そこでベストなのは、いつもポップコーンだった→そこではいつもポップコーンが最高のお供だった(= The popcorn was the best companion to seeing a movie.)」という意味になります。

この文は、"Saturday Night At The Movies"の歌詞の中のAnd the popcorn from the candy stand makes it all seem twice as good.という個所を踏まえていて、どちらの解釈も成立します。前提と焦点については『英語リーディングの真実』p.87参照。

・BestのBが大文字なのはtypoかまたは強調です。

・末尾の:))は「笑顔」の印です。)は1つで「:)」のこともあります。コロンではなく、セミコロンを使って「;))」にすることもあります。横向きにすると「:が目」で、「))が笑っている口」に見えます。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第6回)2024年11月2日

 

TikTokのaroundsoundsmusicというアカウントはoldiesの名曲をたくさん紹介しています。Bay City RollersのBye Bye Baby(1975)を紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

Love-em or Loath-em, that was the era to grow up in, superb memories …

これを読んで、規範文法に則った英文に書き直してください。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第6回解答)2024年11月2日

 

Love-em or Loath-em, that was the era to grow up in, superb memories …

=Whether you love them or loathe them, that was the best era to grow up in. I have superb memories.

・loathは「気が進まない、嫌だ」という意味の形容詞で、「嫌悪する」という意味の動詞はloatheです。

・That was the era to grow up in.は、That was the era for me to grow up in.という意味ではなくて、That was the best era to grow up in, better than any before or after.という意味です。

・inは前置詞で、eraが「意味上の目的語」です。『黄リー教』p.292のタイプ2です。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第5回)2024年10月22日

  
TikTokのaroundsoundsmusicというアカウントはoldiesの名曲をたくさん紹介しています。The DriftersのSaturday Night At The Movies(1965)を紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

Love this song and what a tune they don’t make them like this anymore

(1) これを読んで、規範文法に則った英文に書き直してください。

(2) theyとthemと2番目のthisは何を指しているか?

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第5回解答)2024年10月22日

  

Love this song and what a tune they don’t make them like this anymore

= I love this song and what a tune this is! They don’t make them like this anymore.

・what a tune this is!は「これはなんて素晴らしい曲なんだろう」という意味の感嘆文です。whatは感嘆形容詞でa tuneにかかっています。

・Theyは音楽業界の製作者(people who produce music)、themは楽曲(pieces of music)、thisはSaturday Night At The Moviesを指しています。第2文は「今の製作者はこの曲のように音楽を作ることはもうしない⇒今はもうこの曲のようなスタイルの音楽は作られない」という意味です。

・They don’t make them like this anymore.はいろいろなジャンルで使われる定型的な表現です。たとえば、Middlemarch is a superb novel. They don’t make them like that anymore.(Middlemarchは素晴らしい小説である。今はもうあのようなスタイルの小説は書かれない)のような具合です。この場合、Theyは小説家、themは小説、thatはMiddlemarchを指しています。

・John DenverのAnnie’s Songを紹介したTikTokのvideoclipには次のpostが投稿されていました。

they don’t make music like this anymore. end of story

「今はもうこの曲のようなスタイルの音楽は作られない。以上だ」という意味です。

・end of storyは、ジーニアス英和辞典には「(略式)(話は)これで終り」と出ています。

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第4回)2024年10月18日

 
TikTokのaroundsoundsmusicというアカウントはoldiesの名曲をたくさん紹介してくれています。 Helen Shapiroの1961年発表の楽曲You Don’t Knowを紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

I was I love with her at this time, I’d just left school and was heading on my way to basic training in the Royal Navy,

これを読んで、規範文法に則った英文に書き直してください。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第4回解答)2024年10月18日

 
I was I love with her at this time, I’d just left school and was heading on my way to basic training in the Royal Navy,

⇒I was in love with her at this time. I’d just left school and was heading on my way to basic training in the Royal Navy.

・投稿者はinと入力するつもりで、iだけを入力して、うっかりnを入力しなかったのです。それでオートコレクト機能(autocorrect)によって、大文字のIになってしまったのです。

・was heading on my way to basic training in the Royal Navyが表している事柄はHe had signed the papers to join the Royal Navy, but had not actually started training yet.です。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第3回)2024年10月10日

  
TikTokのaroundsoundsmusicというアカウントはoldiesの名曲をたくさん紹介しています。

The DriftersのSaturday Night At The Movies(1965)を紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

Oh this is straight from the top drawer. Man, I love The Drifters.

You don’t like their music? You don’t much like life.

全体の意味を日本語で言いなさい。

ちなみに、私もこの曲が大好きで、サビに次のような素敵な歌詞があります。

Who cares what picture you see

When you’re huggin’ with your baby

In the last row in the balcony?

balconyは「(劇場の)2階桟敷」です。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第3回解答)2024年10月10日

 
Oh this is straight from the top drawer. Man, I love The Drifters.

You don’t like their music? You don’t much like life.

=Oh!This is definitely a top-drawer tune. Man, I love The Drifters. You don’t like their music? If not, you don’t much like life.

おお!これはまさしく最高の曲だ。ああ!僕はThe Driftersが大好きだ。君は彼らの音楽が好きじゃないって?もしそうなら、人生をあまり好きじゃないんだな。

・top drawerは、文字通りの意味は「最上段の引出し」です。ここからthe top drawerは「上流階級、最高級」という意味を表します。「最高級の、第一級の」という形容詞にするときはtop-drawerにします。

・straight from the top drawerは「まさに最高級の」という意味のidiomです。straight out of the top drawerあるいはstraight out the top drawerとも言います。

・MLS(=Major League Soccer)の公式XにSome saves straight out the top drawer this week!というタイトルのvideoclipが出ていました(2024年10月2日)。「今週の(ゴールキーパーの)最高のファインセーブのいくつか」という意味です。

・Manは間投詞です。Webster大辞典にはoften used interjectionally to express intensity of feelingと説明されています。

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第2回)2024年10月7日

TikTokのaroundsoundsmusicというアカウントはoldiesの名曲をたくさん紹介しています。

Judy Collins & Pete SeegerのTurn! Turn! Turn!(1966)を紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

probably not many will agree but my opinion one of the best female voices of all time

これを読んで、規範文法に則った英文に書き直してください。

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第2回解答)2024年10月7日

probably not many will agree but my opinion one of the best female voices of all time

(1)= Probably not many will agree but my opinion is that hers is one of the best female voices of all time.

(2)= Probably not many will agree but in my opinion hers is one of the best female voices of all time.

・Judy Collins & Pete SeegerはJudy Collins(女性)とPete Seeger(男性)のデュエットです。しがってtheirsではなくhersです。

hersを使わずにshe had one of the best female voicesにしてもいいです。

・thatを省略して、代わりにコンマを置きmy opinion is, hers is …にしてもいいですし、コンマも置かずにmy opinion is hers is …にすることもできます。

・of all time = ever(これまでで)です。ただし “The best of all time” means "the best ever, with the suggestion that I do not think it will ever be surpassed".です。

Shohei Ohtani is the GOAT.と言いますが、「大谷翔平はヤギだ」という意味ではなくて、the GOAT=the Greatest Of All Timeです。

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第1回)2024年10月3日

 
TikTokのaroundsoundsmusicというアカウントはoldiesの名曲をたくさん紹介しています。

The FortunesのHere It Comes Again(1965)を紹介したvideoclipに以下のpostがついていました。

fantastic memories I was just a youngen These oldies remind me of my sisters / Brothers me an dad sadly they are no longer here god bless them it makes me sad when I heR oldies

これを読んで、規範文法に則った英文に書き直してください。

youngenとは何か? 比較級ならyoungerではないのか? それともyoung menのこと? どちらにしても不定冠詞がついているのはおかしいのでは?

an dadとは何か? 不定冠詞ならa dadではないのか?

heRとは何か? こんな単語があるのか?

 

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(第1回解答)2024年10月3日

fantastic memories I was just a youngen These oldies remind me of my sisters / Brothers me an dad sadly they are no longer here god bless them it makes me sad when I heR oldies

⇒ Fantastic memories! I was just a young ’un. These oldies remind me of my sisters, brothers, me and dad. Sadly they are no longer here. God bless them. It makes me sad when I hear oldies.

・a youngen = a young ’un = a young one = a youngsterです。

・un, ’un (略式 通例修飾語を伴って)やつ、物(one) He’s a good ’un. 彼はいいやつだ(ジーニアス英和辞典)

・an, an’ (略式)=and(ジーニアス英和辞典)

・blessは仮定法現在で「原形・述語動詞・③」。God bless them.は祈願文。

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(前書き2)2024年10月3日

(前書き1)で、TikTokのpostを紹介して、「投稿者は何を言いたいのか」「規範文法に則った英文だとどうなるか」を解説しました。TikTokやYouTubeのpostはハチャメチャな英文が多いので、「なんとなく、こんなことを言っているんだろうなあ」で終わらず、「規範文法に則った英文だとどうなるか」まで考えると、読解や作文のよい勉強になります。

TikTokやYouTubeの投稿英語は、喋ってるのをそのままキーボードで打ったようなもので、句読点も入れなければ(喋っているときに「僕は てん 彼女と一緒に てん ディズニーランドに行きたいなあ まる」なんて言わないもんね。もっとも「愛しい人 All You Need is LOVE まる まる まる まる」なんて歌もあったけど)、shift keyを押すのが面倒なので全部小文字だし、逆にaとかzはshift keyのそばだから、一緒にshift keyも押しちゃってAやZになってたり、あるいはaやzを押すつもりでshift keyを押しちゃって、それで次の文字を打つから、aやzが抜けて、次の文字が急に大文字になってたり、なんてこともある。typoも多いし、「ハチャメチャな英語」だ。でも「デタラメな英語」ではない。

結局、読む方に、ベースとして、規範文法の素養があるから、「ハチャメチャな英語」でも分かるんじゃないかなあ… なんて「規範文法論者」の僕なんかは思っちゃう。

TikTok・YouTubeのpostを読んでみよう(前書き1)2024年7月14日

 TikTokでMLBのvideoclipを見ていたら、ホームランボールをキャッチした人から、子供がそのボールをもらって喜ぶシーンをたくさん集めた動画があった。そこのコメント欄に次の書き込みがありました。

 
It’s about the catch not the keep. Had a few free beers bought for me from giving ball away is a bonus too

この英語は滅茶苦茶だけど、これこそ、アメリカ人が日常的に読み書きしている「生の英語」そのものじゃないんだろうか? 構文だの文法だの、いちいち気にせずに、どんどんTIMEやNewsweekの英語に触れていれば、このSNS上のハチャメチャな英語が「これは滅茶苦茶で、正しく書くなら、こうなるはずだ」って、自然にわかるようになるのだろうか?

僕にはとてもそうは思えない。きちんと構文や文法を勉強したから、TIMEやNewsweekの英語は正しい英文で、SNS上のこの書き込みは滅茶苦茶な英文だ、ってわかるんじゃないだろうか?これがわからずに、SNS上のこういう投稿みたいな英文を書いていたら、とてもじゃないけどアメリカでまともな仕事はできないと思う。

このTikTokの投稿を簡単に説明しましょう。 第1文は正しい。ItはWebster大辞典のitに8 a:what is important: what counts: what mattersと出ている用法で「大事なこと」という意味です。「大事なことは(ホームランボールを)キャッチすることにあるのであって、保有することにあるのではない」という意味です。

第2文はHadとballが間違っている。正しくはHavingとthe ballで、Having a few free beers bought for me from giving the ball awayは「そのホームランボールを子供に譲ってあげることで、その子の親からビールをおごってもらうこと」という意味です。買ってもらうのに、こちらからはお金を出さないのでfreeと言ったのであって、べつに「無料のビール」というものがあって、それを買ってもらうわけではありません。

動名詞のHavingがisの主語です。tooは「その上」という意味の副詞で、全体は「その上、そのホームランボールを子供に譲ってあげることで、その子の親からビールをおごってもらうのは思いがけない贈り物だ」という意味です。

この英文の次には違う人の投稿があった。

You have but to look at Reveryone who see’s that has a giant smile.

これは輪をかけて酷いですね。have but toはhave only toの意味で、You have but to look atは「...を見さえすればいい」という意味です。

ReveryoneはEveryoneの書き間違いで、Rが大文字になっているのは、ここから英文が始まるからです。つまり、この人は、おそらく何か言いたくてYou have but to look atまで書いたんだけど、そこで気が変わって、やめちゃったんですよ。それで、新しく英文を始めたんだけど、Everyoneと書くところをReveryoneって書いちゃった。キーボード上でEとRは隣り合っているから、RとEを両方打っちゃったんでしょう。

see’sはseesの間違いです。seesは三単現のsがついた現在形・述語動詞です。thatは代名詞で、seesの目的語、thatの中身は「ホームランボールをキャッチした大人が子供にそのボールをあげること」です。Reveryone以下は「それを見た人はみんな満面の笑みを浮かべる」という意味です。

もちろんTikTokの書き込みは滅茶苦茶な英語ばかりではない。次のような洒落た英文だってある。

Every ball I’ve caught at a game I’ve given to a kid.

これはI’ve given to a kid every ball I’ve caught at a game.の倒置形で「私はこれまで、試合でキャッチしたボールはみんな、子供にあげてきた」という意味です。このatはlocationではなくてeventを指す用法です。たとえばI was bored at the party.(私はパーティで退屈した)のような使い方です。

私はnative speakerでもなんでもない。ただ中学・高校で学ぶ(「かつては学んだ」と言った方がいいのかもしれない)学校文法を知っているだけです。それでも、フィーリングなんかで適当にやっつけずに、きちんと「品詞・働き・活用」を考えて読む習慣を身につけているので、このくらいの英文の真贋はすぐにわかります。『黄リー教』のコラム9「『英語の仕組み』を学習することの重要性」で「英米人の部下が作成した文書の文法上の誤りを指摘して直させることなど朝飯前です」と書きましたが、要するに、こういうことです。